前回、私が株式投資を始めたきっかけはIPO(新規公開株)であるという話をしましたが、IPO銘柄を獲得するのは激戦でなかなか手に入りません。1年に1~2件、やっと手に入っても1回売ればそれで終わりです。
IPOだけではNISA枠は使い切れない
当初、私はとりあえずNISAで投資を始めたので、当時、年間100万円までだったNISA投資枠(=年間100万円までの株式購入は、その銘柄の配当及び売却益が無税になる)を使い切るには、IPO銘柄以外の銘柄を選び抜いて何か買わなければならないのでした。
でも、勝率が高い(自分が買った後、値段が下がりにくく上がりやすい)銘柄を見出すのは簡単ではありません。
結局、①株主優待が魅力的な銘柄、②配当利回りが高い銘柄、③過去1年ほどの株価の推移を見て、現在下がり切っていると思われた銘柄を中心に、購入することにしました。
幸運にもアベノミクス相場に救われ、10年ほど投資をするなかで値段が上がり、儲かった株はいくつもあります。しかしやはり株は簡単ではなく、残念ながら下がってしまった銘柄もあります。
ちなみに後者、つまり「含み損」の出た株について、その後どのように対応したのかというと、当面売らずに持ち続けることにしました。株は(不動産も同じですが)、売りさえしなければ損失は確定させずにすみ、価格が回復した後に売って利益を出すことができるからです。そのような状況を願って持ち続けることを「塩漬け」にするといいますが、株式投資初心者だった当時の私は、とにかく株では損したくないという思いが強く、塩漬けを選択したわけです。
このように、ずっと売らなければ株で損することはない、というと聞こえはよいですが、長期間、多くの株を塩漬けするとなると当然デメリットもあります。株を売ってお金に戻さないままでおくわけですから、(資金不足で)別の新しい株を買いにくくなってしまうのです。ただ、それでも損を出さないですむということの魅力は強いんです。
特に、NISA枠で買った株は、そうでない(課税ありの)枠で買った株よりも塩漬けを生みやすいという性質を持っています。というのも、NISAで買った株を、含み損のある状態で売ると、差額がそのまま損失になってしまう(損益通算による還付が受けられない)ためです。
と、いわれてもピンと来ないかもしれませんので、逆から説明しましょう。
そもそもNISAでない普通の株取引、つまり儲かれば税金を取られてしまう「特定口座」を用いた場合のことを考えてみます。しかも、損失が出たとき、つまり買った値段より安く売ったらどうなるかです。実はそういう場合、状況によっては丸々損失にならず、一部還付(キャッシュバック)によって損失が軽減される場合があるんです。具体的には、その年に自分が得た他の銘柄の譲渡益と通算できる(儲かった時に取られた税金が戻ってくる)というメリットがあるんです。
たとえば、税金を2割として計算すると、銘柄Aで20万円儲け、銘柄Bで10万円損することが立て続けに起きた場合、Aは20万円-税金4万円(証券会社が源泉徴収)=16万円ゲット、そのあとBでー10万円となることによって、通算利益は20万円ー10万円=10万円、全体として払うべき税金は2万円となるべきだから、Aの時点で払った4万円は取りすぎということになるので、Bの株を売って、額面では購入金額より10万円少ない金額が自分の口座に戻ってくるときに、+2万円余分につまり-8万円の状態で口座に戻ってくることになります。2万円の税金が還付されるんです。
NISAに話を戻すと、儲かった時に税金を払わなくていい分、損した時に、同時期の利益と差し引きで税金が還付されることもない、つまり含み損がそのままダメージになるということなんです。
NISAは、世の中的にはメリットばかりが強調されるのですが、後々、私が株の中級者になり2~3か月のスパンで売買するスイングトレードを中心に取引するようになってからは、こうしたデメリットを痛感するようになり、NISAは手堅い銘柄以外は手を出すべきではないと思うようになりました。現在では、無理にNISA枠を使い切らなくてもいいやと思うようになりました。
なお、旧NISAは5年間限定の制度が2023年末まで1年ずつ更新され続けてきたので、私自身、その間は下がった株をそのまま持ち続けることができ、ほとんどの銘柄は株価回復後に売却することができました。しかし、いくつかの銘柄は、結局株価が戻らないまま、経営不振ゆえの上場廃止や買収により、強制売却を迫られ、損失を出すことになりました。