公務員が自分のサイト・ブログ・SNSにアフィリエイト広告を出して稼ぐのは違反?

今や多くの公務員が、自分のサイトやブログ等にアフィリエイト広告を出すのは当たり前になりました。副業というほどではないにせよ、うまくいけばちょっとしたお小遣い稼ぎもできるといった状況でしょうが、そもそもアフィリエイト広告収入を得ること自体、副業規制との関係でどうなのか…。

この投稿では、この「古くて新しい問題」について考えてみます。

国や自治体のソーシャルメディア利用ガイドラインでは、アフィリエイトについてあえて言及していない

アフィリエイト広告が世の中に入ってきて、おそらく20年以上経っていると思いますが、公務員の副業規制との関係で、はっきりと禁止をルール化した文書は、ほぼ見受けられないようです。総務省や地方自治体(下記リンクカード参照)が作っているソーシャルメディア利用のガイドラインには、主に投稿やリアクション(いいね、フォロー等)についての注意事項が掛かれており、アフィリエイト広告とその収入云々に関しての記載はありません。

一方、公務員の副業に関して情報提供やスクール運営を行っている安彦和美さんは、一部の地方自治体で、アフィリエイト禁止通達が出たという情報をキャッチしたという記事を書かれています。職員にはっきり禁止を通知した自治体があるのが本当ならば、そこでは、懲戒処分の恐れもあるということになります。

はっきり禁止していない自治体では認められるのか

では、はっきり禁止されている自治体以外では、職員がアフィリエイト広告を出して収入を得ることの合法性はどうなのでしょうか。

これは、あくまで当サイトにおける見解であり、以下は、最終的にはお読みいただいた各自の判断に任せますが、現状ではどちらも考えられます。

【明確に禁止されていない限り合法と考える説】

職員個人が勤務時間外に運営しているSNSや個人サイトにアフィリエイト広告を貼り付けることで収入を得る手段が現存することを、まさか役所の人事当局が知らないとは思えません。現時点で、アフィリエイト広告収入が副業制限に違反すると人事当局が考えているなら、「不意打ち防止」という意味であらかじめ職員に対してそういう通知を出しておくことが「筋」です。

ところが、ソーシャルメディア利用のガイドラインを作りながら、アフィリエイト禁止を明示せずに放置しているとなれば、現状では、静観(黙認)しているという見方ができます。今後、仮に明確に禁止されることになったとしても、「罪刑法定主義」に準じた考え方をとれば、以前の行為は懲戒処分には問われないとなる可能性が高いでしょう。

【明確に禁止されていなくても合法とは言えない説】

一方、役所の縦割りの悪いところですが、ソーシャルメディア利用のガイドラインは広報・情報発信・ICT関連を所管する部署が主導して作ったものだから、副業の観点は所管外だからあえて踏み込んで言及しなかっただけで、書いていない=合法であると認めたことを意味しない、という可能性もあります。

ちなみに、上の千葉市のガイドラインと、FAQ(よくある質問)には興味深い記述があります。

地方公務員法をはじめとする関係法令及び職員の服務や情報の取扱いに関する規程等を遵守しなければなりません。

ガイドライン4(2)

服務規程の遵守とはどういうことですか。

A.地方公務員法第三章第六節の服務規程を遵守することです。
具体的には、信用失墜行為の禁止(法33条)、秘密を守る義務(法34条)、職務に専念する義務(法35条)、政治的行為の制限(法36条)等です。

FAQ Q.13

FAQを読む限り、守るべき服務規程の例示列挙には副業規制のことは書いてありません。が、「等」に含まれているかどうかという話ですね。地方公務員法第三章第六節と書いてあるので、含まれないとは言えないでしょう。

それにしてもなぜこういう書き方になっているかを推測すると、そもそもソーシャルメディア利用(に限らず、古典的な個人サイトの運営を含む)における一番の課題は、記載内容やリアクション(いいね、フォロー等)におけるトラブル防止にあるので、まずは最低限、信用失墜・守秘・職務専念・政治的行為について列挙すればいいという考えで、このような規定及び回答になったのだと思われます。

言い換えると、アフィリエイトについては、分かっていてあえて書かなかった(いったん黙認しつつ、状況によってはOUT!とするグレーな運用を想定している)ということではないかと思います。

で、実際に人事部門に聞いたらどうなるか、聞かないほうがいいのか

では、アフィリエイト広告収入に関するルールを定めていない役所の人事部門に、「うちの役所の職員が行うことは大丈夫ですか」などと問い合わせた場合、どうなるでしょうか。

結論からいえば、正式に質問すれば、セーフと明言される可能性は低い(アウトと言われてしまう可能性が高い)と当サイトでは考えます。

誰か1人にでも公式にOKと答えてしまえば、役所の内部では簡単に知れ渡り、これで堂々とやれる!とばかりに、同じ役所からアフィリエイター続出となってもおかしくありません。それは人事当局としては、決して望ましい結果ではないでしょう。

だから、白か黒かと正式に聞かれたら、「アフィリエイト広告収入が発生しうる私的なインターネット情報発信行為は、報酬を得て行う事業・事務に該当しうる」として、ある種、警告的な意味も込めて、そうした行為自体を抑止しようとすることは容易に想像できるのです。

したがって、アフィリエイト広告を入れた個人サイト・ブログ運営を行う場合は、職場ではあえて触法可能性を確認せずに、あくまで自己責任でグレーゾーンのままバレずに運営するのが最善手だと考えます。

なぜグレーゾーンのまま放置されてきたのか

ではなぜ、総務省やいくつかの自治体が出しているSNS利用ガイドラインでは、アフィリエイト広告収入に関して明言を避けているのでしょうか。あくまで当サイトの推論ですが、こんな事情ではないかと思います。

  • 前例主義の役所としては、他の自治体がどこもはっきりと言わない中で、先陣を切って「ダメ」とも「良い」とも言いたくない、言えない。
  • 個人の趣味とか仕事以外の生活の話とか、世の中のニュースへの言及などをテーマにして、勤務時間外に(職務専念義務の順守)、職務の公正さを疑われるなど後ろ指をさされることなく(信用失墜行為とならない)、業務上の秘密を洩らすこともなく(守秘義務)、ましてや政治的行為に当たらない投稿を行っていたら、表現活動自体では問題は生じない。そういった情報発信に関連したアフィリエイト広告収入がたかだか月に数万円くらい出ても、公務の公正性や信頼性を害するとは思えないので、あえて厳格に規制する必要はないと考えており、とりあえず黙認を決め込んでいる。
  • 原稿を書いた対価として原稿料を貰うのならば、たしかに報酬を得た事業・事務に当たると言われても説得力があるが、たかだか成果報酬型で不確定性の強いアフィリエイト広告収入は、法が規制する報酬を得た事業・事務であるとして厳格に対応すべきか微妙なので、とりあえず黙認を決め込んでいる。

おそらくこんなところではないかと思われます。ただ、これが役所がだんまりを決め込んでいる理由なら、あるきっかけで方針がガラガラと音を立てて崩れ、方針転換が起きるかもしれません。

今後、アフィリエイトが明確に禁止されるきっかけがあるとすれば

それは、公務員に対する社会の目、要するに

「公務員が、インターネットブログ等でお金を稼いでいる。副業禁止ルールに違反しているのではないか?ケシカラン」

ということが世間で炎上してしまった場合だと、当サイトでは考えます。

今でも、一部の公務員がアフィリエイト広告で、ささやかに小銭を稼いでいるであろうことは、公務員以外でも知っている人は知っています。ただ、悪目立ちしないようにやっていたので、そこまで目を付けられることはなかった、というのがこれまでの実状でしょう。

ところが今後仮に、現役公務員がアフィリエイトで荒稼ぎし脱税もしたというような事件が起きて報道され、炎上することでもあれば大きく話題となり、一気に状況が動くかもしれません。

そんなときに、お役所業界が

「守秘・職務専念・信用失墜行為禁止・政治的行為禁止義務を守る限り、ブログ等の運営に伴うわずかなアフィリエイト収入程度なら問題視する必要はなく、副業には当たらないと整理しています」

という主張をして世論の荒波に抗しきれるのかといえば、おそらく無理でしょう。世の批判を受け止めてまでアフィリエイトを認めてあげる義理は役所の人事当局にはないのですから。

こうして、収入金額の多寡を問わず、一気にアフィリエイト規制の大波がやってくるかもしれません。

そうならないためには、世の公務員一人ひとりが、アフィリエイトは各種規定を守った投稿等とセットでささやかに行うことや、万一年間20万円以上儲かったらきっちり申告・納税するなどを守るしかないのではないかと思います。

やはり、アフィリエイトは国が条件付き公認し、地方もそれにならっていくことが今後のため

とはいえ、現状のグレーゾーンが今後も続くことはあまり良いことではないと当サイトは考えています。今のようなグレーゾーンのままだと、どこかで誰かが何か事件が起こして世論が炎上した時点で、そもそもアフィリエイトそのものが信用失墜行為だったのではないかという疑義すら出かねず、議論の行方次第では全面焼け野原(世論の炎上を受けてアフィリエイト全面禁止とせざるを得ない状況)に追い込まれる可能性すらあります。

なので、そうした事件が起こる前に、まずは国が先行して一定の条件を付けてアフィリエイト広告収入を公認し、それに地方も追随していくことが望まれます。そうすれば、今後炎上した場合でも、アフィリエイトはもともと一応認められているという前提で、個別のルール違反事案が問題なのだという説明ができると思うからです。

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