AERA2024/2/19号に「FIREなんて負け組ですよ」-「2千万円で早期退職は可能か」セミリタイア検証
なるタイトルの記事が載りました。私は雑誌でたまたま読みました。いつまで掲載されているかわからないけどネット記事もありますね。(ネット記事は少し見出しが異なる)
株や投資信託で資産を増やし、資産数千万円で会社を脱出する人たち。ミニマムな暮らしと、やりたいことの両立──理想的に思えるが、現実はどうか。AERA 2024年2月19日号より。
一般論として、FIRE実現には最低1億は要るんじゃないか、と物の本で読んだ気がしますが、最近では2~3千万円溜まったらさっさと仕事を辞めてしまう人がいるということだそうです。
もっとも、こういう方は完全に働くのを辞めるわけではなく、週2~3回好きな仕事をしてお金を稼ぐこともあり(サイドFIRE)、また独身かつミニマリストで本当に極力お金を使わずに生活しているみたいです。
文中には、年間の食費が10万円台前半つまり15万円以下という人が出てくるのですが、自炊しているとしてもどうやればそこまで安くできるのだろうかと思ってしまいますね。炭水化物、野菜、タンパク質をバランスよくきっちりとって、本当にその額で生活できるんでしょうか、、、。
ちなみに、文中で「FIREなんてね、負け組なんですよ」という言葉を引用されているFIRE経験者は、その発言の意図をこう補足しています。
「社会や組織に属すれば、給料や今年の売り上げ、利益……何かしら競争があります。早期退職は、そういう勝ち負けの土俵から降りることなんです。もう、何も気にしなくていい。数字もノルマもない。自由。そこが根幹だと思います。働いている人より偉くもないし、必ずしも憧れるようなものでもない」
この記事の書き手は、「FIREを冷ややかに見る人がいるのは、ある意味負け組なのに、必要以上に「すごいこと」として語る人がいるからかも」と分析していますが、私は、もう少し丁寧に考えるべきだなと感じました。
まず、FIREを冷ややかに見ているとか、負け組だろ、と感じているのは誰なのかという話です。
そもそも、この記事内でFIREが負け組だという話は、資産2000万円程度で退職した(企業社会における出世競争・生存競争のレールから降りた)人が、自嘲気味に語っていることです。
何が勝ち組か負け組かの基準・価値観は人によって異なりますのは当然ですが、この発言をした人にとっては、会社を辞めて完全にスッキリしているわけではなく、所属や承認の欲求を手放したこともあって、なんとなくモヤモヤもあるからこういう発言になっているのではないでしょうか。
これが、仮に資産1億を達成して悠々退職した人なら、働いたことのご褒美、って考える人が多いでしょうから、決して負け組なんて発言は出ないように思いますね。
一方、FIREと距離を取り、懐疑論を取る人の中にも冷ややかに見ている人がいるように思います。そうした人たちの基本的な動機としては、働かない生活に憧れながらも自分にはまねできないという、多くの人が持つアンビバレントな感情が根底にあって、それを克服したFIRE達成者への嫉妬のまなざしが背景にあると私は思っています。
「酸っぱい葡萄」や「アリとキリギリス」じゃないですが、自由だけど不安定。いざとなれば食い詰めることになり、それ見たことか、ざまあみろ的な感情が、きっとあると思うんですよ。
ところで、ここ最近のアメリカでは日本とは比較にならないインフレが続いていて、一度FIREに成功したはずの人が、そのせいで資金計画が狂ってしまい、また働き始めたなんて話もあるようです。転職や起業のハードルが低いアメリカならそれでいいんですが、同じことが日本で起きたらと思うとややゾッとしますね。