実名で本を書く、ということ。公務員の副業(兼業)と印税の問題

本を書く、という副業

行政関係者がよく本を出す出版社に、学陽書房とか、ぎょうせい、がある。

そこから本を出して印税ゲット(副業)、なんて私のような場末の公務員には夢のような話だが、他自治体の知り合いの知り合いくらいをたどると、本を出したことのある人はいる。

本を出せば、通常なら10%の印税がもらえるはずだが、兼業規制との関係でどのように対応しているのかは、合法的な副業方法を研究するサイトとしては大変気になるところである。

聞くところによると、これは自治体による差が大きいようだ。兼業許可をしっかりとり、執筆は業務時間外のみで行い、ささやかな印税(30万円以内程度)なら受け取ってOK、というところもあるようだ。

しかし、そもそも兼業許可自体が厳しい自治体もあるらしい。そんなことが、次の本に書いてあった(画像は楽天ブックスのアフィリエイトリンク)。やや長いが、引用するのでご覧いただきたい。

 役所内の仕事が「特に、自分の人生をコントロールし、かつ、自分の権利を主張する中で、より強くなり、より自信を持つようになるプロセス」とならない人が多数であれば、せめて役所外の活動がやりやすいよう扉を開けようというのが私の提案です。
 たとえば、所属する組織で評価されるといったことに、自分の軸を見出せる人ばかりではありません。自分が得意なこと、関心のあることで世の中と関わって、社会の一員であることの実感を得られることがエンパワメントになります。世の中になんの役にも立っていないと、くすぶっている人に活力を取り戻し、そうした人の社会・プライベート・仕事すべてにプラスの効果を生む可能性があります。
 「つらいことがあっても仕事以外で目標があったり、外部の方といろんな付き合いがあるとリフレッシュできる。つらいことがあっても乗り越えられる。役所一本だと精神的にストレスがたまると思う。これ一本だと思うとつらい。それしか道がないと思うと負担になる」(50代・男性)
 滞留する女性職員だけでなく、専門分野を順調に昇進する男性職員からも、右のような意見が出ます。また、「仕事一辺倒でないほうが結果的には良い仕事ができる」ともいいます。役所外のつながりで視野を広げ知識が深まれば、本来業務に役立つだけでなく、居場所が増えて精神衛生上のバランスが保てるメリットもあるでしょう。
 2017年3月に政府の「働き方改革実行計画」により副業・兼業の普及促進が示され、「地域貢献に生かしていく」ことを目的に独自で公務員の副業・兼業を奨励する制度を整備する自治体が出てきました。副業を認めることは人口減少時代に人手を提供する効果だけではなく、職人本人のエンパワメントにつながる側面があると考えます。京都市では2009年に、副業・兼業を許可する基準を詳細に明記した形で「営利企業等の従事制限に関する規則」を改正しました。この改正の必要性を考え実行した京都市職員岡田博史さん(当時。現在は大学教員へ転職)によると、基準を明確にすると法外な収入の抑制になるだけでなく、きちんと申請する職員が増え、さらに「この範囲でなら積極的に活動できる」ことの周知にもなり、役所外での活動の後押しになっているそうです。こんな基準があると「ここまでならOK」がわかりやすく、チャレンジに前向きになります。
 一方、営利企業等への従事許可申請を任命権者に提出しても、印税はもちろん原稿料や講演謝礼でも、申請を最初から「受け付けない」自治体もあります。地方公務員法第38条「営利企業等の従事制限」の逐条解説(『質疑応答地方公務員法』ぎょうせい)によると、報酬とは労働の対価なので、該当しない旅費等の費用弁償や謝礼としての原稿料や講演料は含まれず、そもそも従事制限の許可は必要ありませんが、それすらいい顔をしない自治体もあります。

※原文中に記載のある引用文献については省略

本のタイトルからお分かりのとおり、この本のメインテーマは副業ではない。女性公務員は体力面や家庭の事情などから長時間勤務が難しいとされているため、事業調整など庁内の基幹業務が任されず、管理職になるための十分な経験が積めないので出世が頭打ちになりやすいという役所の人事政策や女性のキャリア論が本論だ。

しかし、なぜこんな副業に関する話が展開されているのかというと、庶務業務ばかりをやらされ、庁内で十分なキャリアを構築できず、役所の仕事では承認欲求が満たされない女性公務員が、副業などで居場所を見つけるとよいという話になっているからだ(上記を読んでいただくとわかるが、男性公務員にも当てはまる話だ)。

とはいえ、副業に関する提言もそうだが、反論も多いであろう女性登用論について、よくもまあ現役公務員がここまで踏み込んで書きましたねえというのが私の率直な感想だ。本のプロフィールでは某政令市職員となっていて自治体名を明かしていないが、筆名は本名で、取材も受けている。

まさに、この方は印税をどう処理しているのだろう。おそらくだが、著者が上記の書きぶり(兼業許可に厳しい自治体もある)をしているということは、ご自身の所属先は印税収入をOKしなかったのではないかと想像される。

印税(金)でなければセーフでしょ

通常、本を出版した場合、出版社から著者に、無料で10冊ぐらい「献本」が進呈される。

これを応用し、報酬をもらってはいけない公務員は、通常の契約条件なら金銭で支払われる印税を受け取る代わりに、出版社と協議して、現物納付(献本)を増やしてもらうという方法があるらしい。

さすがに、自分の手持ちの献本は、人に配ることはあっても売ることはないだろう。だから対価を得た副業にならないのでセーフという説明ができるようだ。

男性も出世が頭打ちで、副業やFIREをしたくなる人はいるんだよ

この本を読みながら、出世の意志を持っているが、チャンスが与えられないというのは別に女性に限らず男性にも当てはまる話だと思った。というか私自身がそうなのである。最近ショックだったのが、後輩(元部下)にも職位で追い抜かれてしまったことだ。

私は今後定年延長で、まだ10年以上役所に残れるが、管理職にならないまま、それでいいのか?と思いはじめた。それが、FIREを意識し始めた理由でもある。

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