公務員の副業に不動産投資をお勧めしない理由②

 前回、次のような投稿を行いました。

 今回はその続きです。不動産投資にはあまりにも大きなリスクがあるため、私は副業としての不動産投資には否定的ですが、全員が失敗しているわけではなく、成功例もあります。ただ、全員がマネできるのかというと、決してそうではないと考えています。今回はその点について説明していきましょう。

成功者がいないわけではないが、かなり困難な道

 まず、成功するためには、ろくでもない物件を高値掴みをしないこと、これに尽きます。そのためには、投資する物件の善し悪しを事前に見抜く、すなわち品定めの能力が必要ですが、不動産のプロでない普通の公務員にそんなものがあるのでしょうか。

 そもそも不動産物件というのは、まったく同じ条件のものはこの世に2つとして存在しないという特性があります。それこそ同じように見えるマンションの部屋でも、隣の部屋では日当たりや間取り、さらにはエントランスまでの距離など何かかが異なり、まったく同じということはあり得ません。そんな中で、立地、築年数、管理状況、近隣の居住需要などから、その物件への投資額(購入価格)が妥当なのかという判断を問われるわけです。とにかく本当に簡単なことではないのです。

 そんな、そもそも物件選びが難しいという現実がある中で、不動産投資物件に興味を持って、物件販売業者と関係を持てば、先方はお勧めの物件をいくつも示し、その中から選ばせてくれることでしょう。しかし、先方のお勧めだからと安心してよいのでしょうか?そんな考えならば、それはまさに良い「カモ」かもしれません。

 なぜなら、そもそもそれらの物件の中には、良い物件が1つも含まれていない可能性があるからです。

 というのも、手堅い物件(いい物件)はもともと希少なものであり、不動産業者もつきあいの長いベテラン投資家に物件を回そうとするため、不動産投資の初心者に分け前が回ってくることはほぼないからです。新参者はあくまで「カモ」で、紹介される物件は相対的には良くないものばかりという可能性も捨てきれないのです。

不動産投資とは、そんな不利な条件下からの船出となるということを知っておいてください。

 さらに、状況を難しくさせる残酷な事実をお伝えしましょう。実は、不動産投資を成功(黒字化)させている人たちが不動産投資のリスクを減らすために行っていることといえば、結局のところ、借金をし続けて購入物件を増やしてスケールメリットを出していくことなのです。

 要するに、所有する物件を2件、3件…と増やしていけば、1つが空室になっても他でカバーできるという発想です。それが軌道に乗って一定の規模に達するとリスクを安定的にコントロールできるようになる、ということなのです。

 もっとも、国家公務員の場合、人事院規則との関係で許される不動産投資の限度は、戸建で5棟未満、集合住宅で10室未満まで(他にも家賃収入の上限もあり)とされています。それくらいだとまだリスク回避には不十分な規模とも思われるので、その足かせがある意味でも公務員の不動産投資はお勧めできません。

購入だけでなく、売却も常に考えないといけない

 残酷な真実はさらにもう1つあります。実は、不動産投資というのは、購入時にいい物件を選ぶことを繰り返し、保有物件数を増やしていけば盤石かというとそう単純でもありません。純粋な意味で投資を極めている人は、先祖代々たくさんの不動産を保有している地元の資産家のような人たちとは異なり、一度手に入れた物件を未来永劫持ち続けるということは、よほどのことがない限りしません。多くの場合、手堅く賃料収入を得ながらも、築古になる前にタイミングを見極めて売り抜けつつ、別の新たな物件を購入するという、保有資産の入れ替えを常としているものです。

 一般論として、不動産物件は築年数が経つほど売却価格は落ちていきますが、物件の売買自体が多少赤字でも家賃収入を含めたトータルでは黒字で収めることを目指すわけです。そのタイミングの判断もまた素人には難しいのですが、上手にできないと途端に赤字になってしまいます。

 不動産投資を始めるということは、保有資産のライフサイクルをその程度まで考えなければいけないのです。私ならとてもマネできるとは思えません。以上を考えたとき、公務員が安易に不動産投資に踏み込んでよいのか、甚だ疑問に感じませんか?

物件に善し悪しがある以上、勝ち組と負け組が必ず出る

 結局の所、投資の成否は物件(及び購入価格)の善し悪しで決まります。ですが、世の中ではさまざまな特性を持つ多くの物件が不動産取引市場に投入されます。そのうち一定数の物件は残念ながら「ババ」(負け組物件)です。仮に公務員であるあなたが不動産投資を行えば、きっと一定の確率で「ババ」を引く可能性はあるのです。

 「生存バイアス」という言葉をご存じでしょうか。失敗(市場から退出)した人の声を聴くことはできず、成功(活動継続中)の人の声ばかりが聴こえるので、失敗した対象を見ずに成功した対象だけを見て判断してしまうことを言います。

 確かに、不動産投資で成功している方は何人もいらっしゃいます。しかし、一人の成功者の陰に何人の失敗者(敗北者)の屍が眠っているのか、考えたことがありますか。少数の投資上手な人が勝ち組物件を総なめにし、残りの多くの人が「ババ」をつかまされているかもしれません。あなたが後者の側に回らないという保証はどこにもないのです。

 最後に一言。前回も触れましたが、公務員だと不動産投資のためのローンが組みやすいです。しかしそれは投資という意味では危ない橋を渡るための手助けになってしまう面があるということを、くれぐれも忘れないでください。

 ついさっきも、不動産投資に成功しているという現役公務員に語らせる投資用不動産販売業者の広告を見てしまいました。投資は、最終的に個人の判断なのでこれ以上は何も申しませんが、くれぐれも生存バイアスという考え方は忘れずにいてください。

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