私は以前、公務員を含むサラリーマンを対象とした副業(不動産投資)セミナーに参加したことがあります。実は近年、こうしたセミナーをはじめ、公務員に不動産投資を勧めるサイトなどが散見されるようになりました。この流れ、いったい誰得なのかと考えるところですが、当然のことながら、投資用不動産の販売会社や管理会社からすると、雇用と収入が手堅く長期のローン返済能力が高い公務員ほど、おいしい潜在顧客層はないでしょう。
もちろん、投資する公務員自身の側も必ず儲かってWIN-WINになるのならよいのですが、必ずしもそうとは限らないということはくれぐれもお忘れなきようお願いしたいものです。
…と、前置きが長くなりました。
以下では、かつて私が、そうしたセミナーで公務員に対して送られる甘い勧誘トークを聴いて率直に感じたことを書きます。別にセミナーの内容に問題があるといいたいのではありません。おっしゃる通りという箇所も多々あります。
しかし、不動産物件は有限であり、良い物件悪い物件が混在します。多くの人が殺到するほど、犠牲者も増えるんです。公務員業界において、あくまで一部の人にしか向いているとは思えない不動産投資を、無批判に推奨・礼賛する流れができつつあることは危険だと思うから、あえて問題提起するものだとお考えください。
以下は、不動産投資投資セミナーで説明された、公務員にとってのメリットや特徴です。
不動産投資は公務員と相性がよい(条件の良い融資を受けやすい)、らしい
私から言えば、悲しいかな、でもこれが真実です。まあ、そりゃそうですよね。公務員は金融機関から見れば融資における信用力が抜群に高いので、他の職業の人に比べて有利な条件で借りられるのだそうです。結果、投資の利回りも上がり、有利な(損が出にくい)不動産投資が可能であるとのこと。この点は、文句の付け所がありません。おっしゃる通りです。
他の投資方法と異なり、自己資金ではなく他人資本(借入金)でレバレッジをかけて資産運用ができる、らしい
自分の手元に種銭(果実を増やしていくための元手のお金)がほとんどなくても、借金をして資産を買い、それをもとに収益を上げていくことができるという話です。これには補足説明が必要かもしれません。
そもそも投資というものは、種銭が大きいほど、そこから得られる果実(利子)自体も大きくなっていくという性質があります。利回りが同じと仮定すれば、10万円投資するよりも100万円投資したほうが多くの利子が得られるという単純な話です。
ゆえに、ひとたび投資を始めるなら、より早く、より大きな資金で始めたほうがいいとされています。そう聞くと、借金して大きな資金を用意してから投資に臨めばいいのかと思う人もいるかもしれませんが、投資というものはリスクが付きまとうため、余裕資金で始めることがセオリーです。「絶対当てるから」といってギャンブルのために生活資金を使いこんだり、借金してまでお金を用意したりすると、散財した時に生活が立ち行かなくなってしまうことは容易に想像がつくでしょう。投資についても同じことがいえます。
それゆえ、親が資産家でもない普通の人は、最初は数十万円程度のわずかな余裕資金を元手に投資を始め、コツコツと資産を増やしていくことになります。FIREを謳う本では、日常生活を節約して1円でも多くのお金を早く投資に回していくことが大事だと書いてあります。
ところが、数ある投資の中でも、実物の土地建物を保有する不動産投資は例外で、多くの人は、借金をして物件を買い、得られる家賃でローンを返していくという形態をとります。手元の種銭がわずかでも、頭金の何倍もの借金をして(あるいは頭金なしのフルローンを組んで)高額の不動産を手に入れ、相応の利回りを狙っていくのです。種銭が少なくても算入できる投資であるというメリットがあるそうです。
ここで、手元資金を100万円持っているケースを考えてみましょう。株や投資信託などの金融商品に投資する場合、仮に年3%の利回りを得る運用ができたとしても、1年後には103万円までしか増やせません。ところが、100万円を頭金にして2000万円の不動産物件を買えば、100万円の投資金額がいきなり2000万円に増えるのです。これを、レバレッジ(てこ)効果と呼びます。仮に家賃収入で同じ年3%の利回りを出せれば、60万円の収入を出せることになります(実際には60万円の収入のほとんどはローン返済等に消えるのでしょうが)。
私としては、この点も、数字の上では間違っていないと思います(反論は次回の投稿でしますが)。
再現性が高い(収益の安定性が高い)、らしい
株式投資やFXなどの投資手法は社会経済環境に左右されやすく、何十年ものスパンで継続して安定的な利回りを出すことは簡単ではありませんが、東京都心の優良賃貸物件なら景気の影響なく常に誰かが入居してくれてコンスタントに収入が入ってくるはずだという話です。投資家が常々、情報収集・分析・決断に苦労しなくても、ほぼ放置しているだけでも毎年容易に成果を再現できるということを、再現性が高いと表現しています。
たしかに、株式投資やFXなどの投資手法と比較すれば、不動産投資はその性質上、相対的に安定感が高いのは事実でしょう。
と、ここまで書くと、不動産投資が魅力的に見えてくるでしょうか?次回、各項目にきっちりと異論を唱えていきたいと思います。