公務員の副業を規制する法律といえば、国家公務員法、地方公務員法、地方教育公務員法です。それぞれの規定について、ざっとおさらいしておきましょう。国家公務員と地方公務員では、根拠となる法律は異なりますが、副業規制のルール自体はほぼ共通しています。ざっくりいえば副業規制の中心となるのは、次の3つの義務や制限です。
- 職務専念義務
- 私企業からの隔離
- 他の事業又は事務の関与制限
1.職務専念義務
要するに、勤務時間中に仕事以外のことを考えたり、そのために手を動かしてはならないということです。お金をもらって仕事をしてもらっているのですからある意味当然のことであり、このルールは多くの企業の就業規則にも入っているはずです。
国家公務員法 | 地方公務員法 |
(職務に専念する義務) 第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない ②(略) | (職務に専念する義務) 第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。 |
2.私企業からの隔離・他の事業又は事務の関与制限
勤務時間外であっても、許可なく営利企業・団体の役員になったり、自ら経営したりしてはならないし、報酬をもらう事務や事業を許可なく行ってはならないということです。許可を得ればできるという規定になっていますが、許可が下りるとは限らないので、原則は禁止と思っていた方がいいでしょう。
国家公務員法 | 地方公務員法 |
(私企業からの隔離) 第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。 ② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。 ③~⑦(略) (他の事業又は事務の関与制限) 第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。 | (営利企業への従事等の制限) 第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。 2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。 |
ちなみに、学校の先生は、この規定が少しだけ緩いです(教育に関する副業であれば、本業に支障のない範囲で可能。もちろん許可は要ります)。
教育公務員特例法 |
(兼職及び他の事業等の従事) 第十七条 教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十七条第一項に規定する県費負担教職員(以下「県費負担教職員」という。)については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。 2 前項の規定は、非常勤の講師(地方公務員法第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める者及び同法第二十二条の二第一項第二号に掲げる者を除く。)については、適用しない。 3 第一項の場合においては、地方公務員法第三十八条第二項の規定により人事委員会が定める許可の基準によることを要しない。 |
3.実はこのほかにも副業を規制しているルールがある
では、上記1~2を守って、つまり勤務時間外に個人事業主として、かつ無報酬であれば何をしてもよいかというとそうではありません。公務員には、守秘義務と信用失墜行為禁止義務が課せられているためです。
つまり、職務で知り得た情報を売るような副業はダメですし、副業自体が、公務員の信用を失墜させるようなものであってもならないわけです。
国家公務員法 | 地方公務員法 |
(信用失墜行為の禁止) 第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 | (信用失墜行為の禁止) 第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 |
(秘密を守る義務) 第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。 ②~⑤(略) | (秘密を守る義務) 第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。 2~3(略) |
以上を整理すると、実際どうなの?
まず、①仕事の内容が、業務上の秘密を漏らすものではなく、信用失墜行為にも当たらないことですね
具体的にはどんな副業がNGになるの?
わかりやすいように、違反となる例をお示ししましょう。30年ほど前の『ナニワ金融道』というマンガにあったネタですが、社会保険事務所(当時)の職員が借金返済に苦しんで、社会保険料を滞納している事業所のリストを街金(消費者金融)に横流し(有償提供)するという描写がありました。それこそ守秘義務違反かつ信用失墜行為でアウトです
①をクリアした上で、②勤務時間外に行うことです
公務員は裁量労働制が適用されているわけじゃないんだから、勤務時間内に副業しちゃダメなのは当然ですね
いま言った2つを満たした上で、副業が有報酬となる場合には、必要な許可を得ることが必要です
①、②をクリアしている夜間や休日の活動であっても、基本的には許可がいるんですね。報酬をもらう以上は
裏返すと、報酬さえもらわなければOK、ってことになるわけなんですけれども