公務員が合法的な副業を行う場合、職場でそのことを言っていいのか、それともなるべく言わないでおくべきなのか。ある意味、永遠の疑問かもしれません。
そもそも、隠れてコソコソやるという発想自体、やましいことがあるのではないかと疑われかねないので、変に隠さず公言し堂々と行えばいいという意見には、確かに一定の説得力があります。
しかし当サイトでは、それに猛然と異を唱え、内密にすべきという意見を強く推していきます。
なぜでしょうか。その理由は、本来言わなくていい合法的副業の事実をわざわざ言うことによるデメリットがあまりにも大きいからです。
なお、このサイトは公務員の合法的な副業のノウハウを伝えるものですが、本記事は、民間企業での副業にも通じるところがあるので、参考にしていただければと思います。
理由1 仕事中に副業のことを考えている(作業している)と疑われる恐れがある
まずはじめに、事務職を例に、公務員の働いている様子を考えてみましょう。勤務中の時間の使い方を分類すると、①インプットの時間(文章や資料を読んだり、他人から話を聴く時間)、②アウトプットの時間(文章や資料を作成したり、他人に情報を説明・伝達する時間)、③考え事をしている時間、④その他の作業時間(運搬、仕分け、設営など)の4つに分けられます。
このうち、職務専念義務との関係でやっかいなのが③の時間です。①インプット、②アウトプット、④その他の作業のように何をやっているかが外から見えるのならいいのですが、他人の頭の中は覗けません。
もし「あの人は副業を行っている」と周囲の人間(上司、同僚、部下)に知られている場合、その人たちはあなたのことをどう思うでしょうか。「あの人は勤務時間中に副業のことを考えていたり、もしかすると①②④をやっている時間も実は副業のために手を動かしているのではないか」と思うかもしれないですよね。
少なくともあなたの上司たる管理職は、そんなことが頭の片隅をよぎるはずです。
もちろん、周囲にそう思われることが、副業している本人にとって具体的に何らかのデメリットとして跳ね返ってくるのかどうかはわかりません。
しかし、知られることでわずかでもデメリットが生じる可能性があるのならば、知られないほうがいいのではないでしょうか。
世の中には、個人のプライバシーに関する情報(LGBTのような属性など)について職場でカミングアウトすると何らかの不利益が生じるかもしれないという話があります。たとえ合法であったとしても、副業をしていることを職場に知られるということは、それと似た話だといえないでしょうか?
理由2 自分の業務分担が重すぎて、他の人に業務を引き取ってもらいたいときに頼みづらくなる
役所であれ民間企業であれ、多くの組織ではその部署の担当業務(所掌事務)を細分化して、所属するメンバー1人ひとりに割り振る(分担させる)ことがあります。当然ながら、何人かで仕事を分け合ったとき、各人の負担の重さに差が出ることがあります。
そして、(副業の有無にかかわらず)自分の負担が重ければ他の人に少し仕事を引き取ってほしいとお願いしたくなる場合もあるでしょう。そんなとき、周囲に副業のことを知られていると困ったことになります。
仕事を押し付けられそうになった側から「あいつは、副業をしたいから仕事を軽くしてほしいと言っている」と言われかねないからです。
副業をしていると知られていなければ、仕事を引き取ってもらい、残業時間を減らせて副業に邁進できたかもしれないのにね…。
理由3 周りから仕事を引き取ってほしいと言われたときに断りにくくなる
逆に、周りの人が仕事の負担に苦しんでいるときに、あなたにもう少し仕事を引き取ってほしいと言ってくる可能性もあります。副業をしている人は特に、本業の時間は集中してテキパキと仕事をこなし、なるべく残業せず早く帰宅しようとしますので残業時間が少なくなる傾向があります。その結果、周囲の人にはあなたの負担が軽いように見えてしまうことがあるのです。
副業を公言しているあなたに、周囲はこう言ってきます。
「副業をする余裕があるなら、他の人の仕事をもう少し引き取ってもらえないかな」
そもそも職務専念義務を守るため、副業は業務時間外に行っているわけで、副業をセーブして本業を増やせという理屈は根本から破綻しています。上記の発言をより正確に書けば、
「平日夜の帰宅後や休日に副業に割ける時間があるなら、それを削ってもう少し残業を増やして周囲の仕事を手伝ってくれないか」
ということになります。聞けば聞くほど無茶苦茶な話です。
ただ、役所の中では、たとえ勤務時間外の合法的な副業であっても、まだまだ寛容とは言い難いムードがあります(その理由はこのあと述べます)。
これが、ひとり親であるとか、二人親だけど子どもが小さくてお迎えが大変といった家庭事情に対しては職場も寛容で、職場の誰もが長時間残業している中であっても、そういった理由によりその人だけ業務の負担を軽くしてもらえたりします。各人の仕事の分担が「形式的不平等」となっても、障害者差別解消などの文脈でいうところの「合理的配慮」のように許容されるんです。
それなら、副業という事情に対しても職場は同じように寛容になってほしいものですが、残念ながら当面そのようにはならない気がします。その理由は次に説明します。
理由4 副業ができない、上手くいかない人たちから複雑な感情を持たれ、自分に不利な結果を招きかねない
公務員は、懲戒処分にでもならない限りほぼ免職(解雇)されない、仕事を頑張ってもサボっても処遇に大きな差がつきにくいといった、ある種「悪平等」な職場です。そんなところで本業の他に副業で活躍している(儲かっているように見える)人がいるという事実が、職場にいったいどんな影響をもたらすのかを想像してみてください。そういうことができない人から見れば、相当複雑な気持ちになるはずです。
自分にはできないことを器用にこなしていることに対する尊敬やあこがれで終わればいいのですが、それが羨望・嫉妬の域に達し、さらに最悪の場合、「ズルい」という感情にまで突き抜けてしまった人から足を引っ張られる恐れがあります。
儲かっていいねと嫌味を言われるくらいならまだしも、根も葉もない噂を立てられたり、それこそ副業の妨害となるような面倒くさい仕事を振られたりするなど、嫌がらせをしようと思えばいくらでもできます。自分が気づいていないだけで、実はあなたが同期や先輩・後輩からライバル視されていた場合には、副業していることが格好の攻撃材料になるかもしれません。
根も葉もないうわさの例としては、こんな感じでしょう。
「本業の給料だけでも十分暮らしていけるのに副業なんてするなんて、きっと借金でもあるんじゃないのか」
「副業で●●してるんだから、無報酬といっても、実際には酒席でご馳走してもらってるに違いない」
「副業するために、本業がおそろかになってるんじゃないか。同じ部署の職員はしわ寄せがきて大変だよな」
役所特有の均一的な雇用環境の裏返しとして、副業を異端視し排除しようとする風土こそが、副業への不寛容につながっているのでしょう。そんな状況下では、副業なんてとても自分から口に出すことじゃないですね。
理由5 副業を教えてほしいと周囲から相談されるようになる
教えたがりの人にとっては悪いことばかりでもないと思われるかもしれません。しかし私に言わせれば面倒事が増え、副業に充てる時間が削られるという意味でデメリットだと考えています(教えてほしいと言ってくる人は1人とは限りません)。
特に副業の内容が投資である場合、儲かる銘柄や投資手法を教えてほしいといった相談が来ることもあります。注意してほしいのは、投資の必勝法など存在しませんし(そういうことを謳うこと自体が眉唾物です)、仮に自分がマークしている銘柄があったとしても、それを軽々に他人に教えるべきではありません。なぜなら、その人が自分と同じ投資行動に出た結果、値動きに影響を与え自分の投資の成否に影響が出てしまう可能性があるからです。
そもそも、投資を含むあらゆる副業は自己責任で行うべきものです。やりかたを人に教えて、その人が失敗したら逆恨みされる場合もあります。親切心を出した結果恨みを買うなんてことは、決してすべきではないですよね。
理由6 副業に現を抜かすなといわれるなど、人事評価的にも悪影響の恐れあり
一般論として、副業をこなせる人は器用なので、本業もそこそこできる上に副業もスマートに両立できる人が多いのではないかと思われますが、中にはそうでない人もいるかもしれません。あるいは、客観的に見れば十分仕事をこなしているはずの人でも、折り合いの悪い上司があなたの仕事ぶりに不満を持っていたら、副業に目を付けられてこう言われるかもしれません。
「副業にかまけることなく、役所の本業にもっとエネルギーを注いでほしい(手を抜かないでくれ)」
「部下が副業で有名になると、上司である俺のマネジメント能力として微妙なんだから、気を付けてくれ」
繰り返しになりますが、公務員職場のデフォルト(初期値)は「副業に寛容でないこと」。そうである以上、副業をしていることが人事評価にネガティブな影響を与えることはないとは断言できません。
まとめ
副業していることを職場に知られるシチュエーションでは、本人に自慢のつもりはなくても、相手側からすれば自慢に聞こえることがあるのです。上記のデメリットを考えれば、副業は積極的に職場に言うことなく行い、万一職場に知られたときには「合法だから問題ないですよね」と言い切るやりかたがベストだと考えます。