前回に引き続き、公務員の副業手段として株式投資の方が不動産投資よりいかに優れているかについて紹介していきます。
株式投資の優位ポイント⑤ 投資を始めるまでのハードル(イニシャルコスト)が低い
株式投資を始める場合、証券会社に資金を預け入れ、購入した株を保有するための証券口座を開設することがまず必要になります。口座開設の手間はゼロではないとはいえ、今やネット(スマホ)で完結できる会社もあり、かなり簡単になっています。
株式の売買というと、市場のリアルタイムな価格変動を見て売買注文を出すイメージを持っている人もいるかもしれませんが、指値といって、あらかじめ自分が希望する売値・買値を決めて売買注文を出しておくことができ、株価がその値段に到達すれば自動的に売買成立(約定)します。当然、メール等で結果通知も来ます。
要するに、一度口座さえ開いてしまえば極端な話、スマホ1つで、数回タップすればいつでも売買できてしまう手軽なものです。職務専念義務の観点でいえば、始業前、昼休み、終業後だけ触るスタイルで十分取り組めるのが株式投資なのです。
また、費用面でいうと、証券口座の開設はもちろん、維持することに関しても、維持費は一切かかりません。株の売買に際しては本来手数料がかかるものですが、実はネット証券大手の楽天証券とSBI証券は、2023年の秋に、取引手数料ゼロを実現してしまいました。もはや、無駄なコストは一切かからず、株式投資の損得は、純粋に売り買いの差額のみで決まる時代になったのです。
一方、不動産投資を始める場合、まず物件選び、購入から始めないといけないですが、不動産売買手続きが大変なことは、一度でも居住用物件(自宅)を購入したことがある方ならよくおわかりでしょう。1件当たりの金額が大きいので物件選び自体も大変ですし、決断にもかなりの重みが伴います。決断に至った後もローンの審査から始まって、融資実行、売買契約、登記、保険加入などと手続きだらけです。
当然、それなりの手間暇に加え、各種手数料もかかります。
株式投資の優位ポイント⑥ 資産保有のランニングコスト(お金・手間)がかからず、持ち続けることで持ち出し(マイナス)になることはない
株式投資の場合、前述のとおり証券口座の維持費は発生しないので、資産保有自体に対するコストはかかりません。逆に、保有する銘柄と株数によっては、配当や株主優待(企業の商品・サービスの割引・無料提供など)といった金銭的メリットを得ることができる場合もあります。良ければ利回りは3%なども出ます。
ただし、企業の経営状況により変化しますので、継続性・再現性は保証されません。また、保有し続けて配当所得が発生したときには課税されますが、当然、持ち出し(マイナス)になることはありません。また、保有限度額がありますが、NISA枠を利用すれば、配当所得を非課税にすることもできます。
それこそ手間という意味でも、売買機会を放棄・喪失してもよいのなら、株は一度買ってしまえば完全放置で保有し続けることも可能です。配当がそれなりに出る銘柄なら、年3%の定期預金をしているようなものなので、銀行預金するよりずっとお得です(後述しますが、原則として源泉徴収なので税金処理も不要)。
なお、株式を一定数保有することで、その会社から株主に与えられる優待制度は株式投資の醍醐味です。奥が深いので、改めて別記事にしたいと思います。
一方、不動産投資を行って物件を保有すると、必ずランニングコストがかかります。それは、固定資産税・都市計画税です。さらに、マンションであれば管理費、修繕費も必要ですし、ローンを組んで買っていれば、そのほかに元本と利子の支払いも発生します。家賃収入が支払いを上回れば黒字といえるのですが、実際には赤字で持ち出しになっているケースがけっこうみられるというのが、不動産投資の問題点です。
また、投資用物件を買って、賃貸に出した後は「ほったらかし投資」を期待する公務員が多いように思います。たしかに、副業規制をクリアするために、物件管理(賃貸借、補修等)を業者に任せることは前提となっていますが、税金処理や、業者とのやり取りなどを考えると、完全にほったらかしにできるわけではありません。
株式投資の優位ポイント⑦ 投資上限額がない
一般論として、公務員の副業には厳しい制限がつきものですが、実は、どのような副業をやろうとするかによって規制の内容が異なります。
なかでも株式投資は規制が緩く、インサイダー取引1に気を付けさえすれば、事実上、保有資産額の上限がありませんので、預貯金がある限りいくらでも買い増していくことができます。投資は、それこそFIRE(早期引退)を究極目標に自己の資産を増やし続けることにありますから、この点はとても重要です。
ところが、公務員が不動産投資を行う場合については、職場から承認を得ずに保有できる物件数や家賃収入に上限が設けられています(国家公務員:人事院基準だと戸建てなら5棟未満、区分所有なら10室未満、賃料収入は年間500万円未満)。
これを見て、そんなに厳しい上限枠でもないじゃないかと思った方もいるかもしれません。賃料収入500万円を利回り5%で計算すると物件価格は1億円。不動産投資にはまって物件をいくつか取得していくといずれ到達する数字です。
この点ですが、不動産投資の特性を考えたとき、結構なネックになるように思います。なぜなら、築古の投資物件を処分して新しい物件に買い換える「保有資産の入れ替え」が成功のための重要なカギとされているからです。すでに複数の不動産物件に投資中の公務員からすれば、せっかく新しい(良い)物件が見つかっても、この規制(投資上限枠)があるために、現有物件を売らない限り別の物件は買えないということも起こり得るのです。
なら、手持ちの物件を売っちゃえばいいではないかと思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。不動産は、破格の値段で売りに出せば別ですが、普通は株式のようにパッと売れるものではありません。その一方で、良い物件が売りに出たときは(要するにお買い得だから)瞬殺で売れてしまいます。それゆえ、この規制に引っかかる不動産投資中の公務員は手堅い物件を買い逃してしまうことがあるわけです。仕方がないことですが、なんとももどかしい規制です。
ちなみのこの上限は、職場の承認を得れば超えることができる建付けではありますが、普通に考えれば、承認が下りることを当てにしないほうがいいです。相続で得た資産ならばともかく、借金しながら不動産投資を拡大していることは、公務員職場では醒めた視線で見られますからね。そもそも、いちいちそういう手続きをしないと物件を増やせないという時点で、生き馬の目を抜くような不動産投資は、公務員には最適とはいえないのではないでしょうか。
株式投資の優位ポイント⑧ 給与所得と合算されないのでどんなに利益を上げても、所得税率は一定。職場にも知られないし確定申告もしなくていい
株式投資では、株式の売買や配当による所得は、証券会社に開設している口座に振り込まれる金額から直接天引き(源泉徴収)されるのが原則です。所得の把握・課税が給与所得などとは別口で行われるため(分離課税)、副業収入があることを職場に知られずに済むだけでなく、原則として税金の確定申告も不要です(状況によっては、申告したほうがお得な場合もありますが)。
さらに付け加えれば、株式投資では儲かった時の税金が給与所得などで見られる累進課税になっていないことです。極端な話、何億円儲けても税率は変わらないのです(地方税を含めて約21%)。
その理由は、株式投資は、長期間安定して稼げるとは限らないので、一時的にドカッと儲かったからといってもドカッと損をすることもあるので、儲かった時だけドカッと税金を取ることはしないという考えがあるのだと言われています。ただし、株式投資による所得のうち、配当所得は安定的に稼げるものなので、給与所得などと合算する場合もあります。
一方、不動産投資の収入は、給与所得などと合算して税金を計算します。ゆえに、ワンルームマンション投資では、毎月の家賃収入より支払いが多くなり多少持ち出し(損失)が出ても、節税になる(所得税の還付がある)と説明されたりするわけですが、逆に不動産投資で儲かりすぎると、税金(累進課税の税率)が上がってしまうというデメリットがあります(まあ、上限のある公務員ではほとんど考えられないでしょうが)。
また、住民税の天引きの関係で、副業していることを職場に知られる可能性があります。
そもそも、合法的な副業なら職場に知られても問題ないのではないか、という考えもありますが、このサイトでは、たとえ合法であっても副業はなるべくこっそりやるべきだと考えていますので、その点からしても、株式投資に優位性があると考えています。
公務員が合法的な副業を行う場合、職場でそのことを言っていいのか、それともなるべく言わないでおくべきなのか。ある意味、永遠の疑問かもしれません。 そもそも、隠れてコソコソやるという発想自体、やましいことがあるのではないかと疑われかねないので、変に隠さず公言し堂々と行えばいいという意見には、確かに一定の説得力があります。 しかし当サイトでは、それに猛然と異を唱え、内密にすべきという意見を強く推していきます。 なぜでしょうか。その理由は、本来言わなくてい
以上、株式投資が不動産投資に対して優位な点を書き連ねてきましたが、もう少しありますので、あと1回、書いてみたいと思いますのでお付き合いください。
- 関係者のみが知り得る非公開の情報をもとに、抜け駆けするような売買をすること。これは公務員に限らず、そうした情報を得られるすべての人が規制対象 ↩︎