不動産投資は、一度スタートさせれば手がかからず(ほっておくことができ)、長期にわたる収益の再現性(安定性)があるという理由で、公務員の合法的な副業方法の第一案としてお勧めされているのをよく見ます。それと比べると、株式投資は継続的な情報収集と決断が必要で、収益の安定性もないという特徴(ほったからし投資ができない)ゆえか、一般的にはあまり推奨されていないのが現実です。
なぜ、インターネット上では、これほどまでに不動産投資の優位性が強調されるのでしょうか。その背景には、不動産投資を「推し」ていきたい業界、そしてアフィリエイターの意向が強く反映されているのではないかと思われます。当然、その裏返しとして、不動産投資のリスクやデメリットが明確に取り上げられることは少ないです。
一方、株式投資のメリットは、不動産投資のデメリットと表裏一体の関係にあるといってもよいので、これまで多く語られてきませんでした。本稿ではそこに真っ向から食い込み、不動産投資に対する株式投資の優位性を余すことなく紹介したいと思います。
その内容は、ある意味で当たり前のことでありながら、多くの方にとって意識しなかったことであるがゆえに、新鮮に映るのではないでしょうか。
なお、株式投資を推奨する流れで、証券会社のアフィリエイト広告(西富が管理する当サイトの収入となりうるもの)を掲載させていただきますので、あらかじめお断りしておきます。不動産投資と株式投資のどちらが自分に向いているか、この記事と、他サイトの不動産投資を勧める記事の両方を読んだ上で、フェアに比較してみてもらえればと思います。
株式投資の優位ポイント① 株式は、不動産投資と比べ、圧倒的に安い元手で始められる
株は原則として100株から購入可能です。このため、仮に1株1000円の銘柄を選べば最低購入資金は10万円となります。その額を聞いて、それでも高いと思うかは人それぞれですが、普通に公務員を数年以上やっていて、月給やボーナスが出たらすぐ散財する癖のあるような人を除けば、まあ用意できる額ではないでしょうか。それを元手に投資を始めると考えれば、そこまでハードルの高い額ではないですよね。
なお、正確に言うと、実は株式は最低1株単位でも買えなくはありません。ただし、そこまで少なくするとリターンも少なくなってしまい効率が落ちるので、基本的には100株単位で売買するのが普通です。
一方の不動産投資ですが、一般的には、数百万円の頭金を用意したり、何千万円のローンを組んでから始めるのが普通です。確かに、いきなり手元から多額の資金が出ていくことはないかもしれませんが、あくまで借金ということを忘れないでください。
株式投資の優位ポイント② 借金しないで始めるから、投資の失敗で破産するおそれがない
株式投資は、現に持っているお金の範囲で株を買い、今持っている株を売る「現物取引」で行う限り、借金をしない投資です。仮に損失を出しても、手持ちの財産が減るだけです。もちろん投資である以上、買った株式の値段が下がってしまい損をするリスクをゼロにすることはできませんが、大損をした結果、抱えた借金のために生活費を削らなければいけなくなったり、返しきれずに破産するようなリスクは生じません。その意味では、あくまで相対的な話ですが、失敗時の深刻度は低いということがいえます。
※もっとも、株式でも、経験を積んだ方は、借金をして売買を取引をする信用取引という方法もあるにはあります。
一方、借金して始めるのが基本である不動産投資は、手に入れた物件の資産価値が下がった(=含み損が発生している)状態で売らなければならなくなった場合、売却代金だけではローンが返しきれないため、貯金を崩さなければならなかったり、借金が残ってしまう場合があります。最悪の場合、自己破産のリスクもあることは決して忘れないでほしいのです。
ところが、そういう最悪の想定を持ち出すと、公務員なんだから働き続ければ返せるのだからなんとかなる、と楽観的に考えている方がいます。しかし本当にそうでしょうか。確かに公務員には職場の経営不振でリストラされるリスクはありませんが、激務で心身を壊し、最悪退職するリスクもゼロなのか?といえば、そうではありません(その場合、団信保険で借金をチャラにすることもできません)。そういうところまで、ぜひ冷静に考えてみてほしいものです。
住宅ローンですら、人生の墓場だという人がいますが、いわんや、投資ローンをや、といったところだと思います。
株式投資の優位ポイント③ 安い分、1点買いではなく分散投資でリスク回避が可能
なるべく損はしたくない、という意味でのリスク管理の観点から言えば、株式は数万円から十数万円単位の小口で買えるので、例えば手元に100万円の余裕資金があって、その全額を株に投資しようということになれば、理論上、株価1000円程度の株なら、様々な銘柄の株を10銘柄、100株ずつ買うことができます。
なぜそんなことをするの?と思われるかもしれませんが、投資にリスクがある以上、投資案件のすべてが儲かるとは限りません。リスク回避のため、様々な銘柄に分散投資することで、いざという時に全部が大損失になることを防ぎます(投資の格言では、「卵を1つのカゴに盛るな」という言い方をします)。
株式は、取引市場に上場している会社ならどの銘柄でも売買することが可能です。日本中(いや海外も含め)、あらゆる業種の企業の株が取り引きされています。選ぶのに困ると思われるかもしれませんが、業界を分散させて株を保有すれば、リスクヘッジになるんです。
ある業界が不況の時に、逆に業績が伸びる業界もあるので、世の中全部の株価が全滅するとは限らないからです。
これが不動産だと、どうしても投資1件当たり1千万円の桁になってしまいます(どんなに安い中古ワンルームだとしても数百万円はしてしまいます。)。1件の投資に対する投資額が大きすぎると、どうしても借金しなければならなかったりしますし、リスクヘッジのために多くの物件を持つことも簡単ではありません。
株式投資の優位ポイント④ 経験の浅い投資家を保護する仕組みがある
投資一般に言える問題ですが、投資商品を売る側と、買う側の間に、投資商品や市場環境についての情報や経験の格差が大きく、販売側が悪質にやろうとすればいくらでも「カモ」にできてしまうという構造があります。
実際、戦後の社会事件史を紐解くと、儲けたいという庶民の心理に付け込んだ痛ましい投資詐欺事件をたくさん経験しています。そうした苦い経験を経て、我が国では金融商品取引業者に対するルールを定め、投資家を保護することを目的とした法制度を構築してきました。
その一つが金融商品取引法(2007年制定。もともとは1948年制定の証券取引法)です。取引に当たっては投資家への説明など、細かなルールが課せられています。
こうしたルールの下で、素人投資家を保護する一例をあげましょう。株式投資では、「信用取引」という形態を使えば、持ち金が100万円しかなくても、その数倍の金額の株を売り買いすることができます。証拠金を預け入れれば、実際に持っている資金の何倍もの「レバレッジ」をかけて投資ができるFXと似た仕組みなのですが、実質的に借金しているのと同じなので、市場が急変すると、あっという間に証拠金・預け金がなくなってしまうので(よく、「溶ける」といいます)、大きなリスクを負う可能性があります。
そして、証券会社では、投資経験の少ない人は信用取引のような高度な取引を行うことができない仕組みを設けています(投資経験年数などをチェックして、条件をクリアしないと始められない)。投資は自己責任ではありますが、投資家を守るため、ある程度の安全ルールが用意されているのが金融商品取引の特徴なのです。
一方、不動産投資にはこうした投資の素人を保護するための安全ルールがかなり少ないのです。なぜなら、不動産投資というのは、自己居住用の物件購入ではないこともあって、融資の手配、売買契約、物件管理(賃貸借契約・補修など)の全過程で、事情が分かっているプロがやることを前提にした仕組みになっており、消費者保護の枠組みから軒並み除外されてしまっているためです。
ところが、実態としてワンルームマンションをはじめとする不動産投資を行っているのは、「ほったらかし投資」を期待したズブの素人だったりします。
不動産投資の最大のギャップはそこにあり、それがいざ投資に失敗した場合の悲劇の原因を生んでいるのではないでしょうか。
今回は、リスク管理の面からの株式投資の優位性を書いてみました。次回は、違った観点からの優位性を考えてみたいと思います。