雇い手と働き手の間に、副業に対するギャップがあるのは役所も民間も同じ

民間企業の副業の現状に関し、1/22の日経新聞にこんな記事が出ていました。

民間企業は公務員と違って法律で副業が制限されているわけではなく、あくまで雇用主と従業者の関係を決めるルール(就業規則)によって規制されうるものです。民間企業における本格的な副業解禁は、政府が提唱する働き方改革の流れで厚生労働省が2018年に改定した「モデル就業規則」以降だそうです(「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の一文が削除された)。

これをもって「副業元年」というのだとか。しかし、実際にはそれをきっかけに副業する人が大きく増えたわけではないという調査結果もあります。

私は日経を購読しているので、以下は記事全文を読んだ上での感想として書きます。

記事の概要と感想

経団連会員企業(要するに大企業ですよね)のうち、従業員の副業を認めている企業は半分を超えている(2022年に53.1%)一方で、同じ企業群が外部から副業者を受け入れているかといえば、16.4%しか認めていないそうです。つまり、自社社員にはどんどん他流試合をしろと言っておきながら、自社は受け入れないダブルスタンダード。当然、副業の受け皿が広がっていない、という紙面になっています。

また、紙面の記事の見出しには

「バラ色ではなかった 副業企業「スキル向上を」、働き手「目的は収入増」」

とあるんです。要するに同床異夢ってことですよね。

企業側としては、従業員に対して自社が給料を払う勤務時間以外に、従業員が自らスキルを磨いて自社の仕事の生産性を向上させてくれればラッキー(自社がお金を払わず従業員が研修を受けてスキルアップしてくれたようなものだ!)みたいな下心を持ってるわけですよ。

一方で働き手からしてみれば、副業することによるスキル向上や、やり甲斐(承認欲求・自己実現欲求を満たす)もあるんでしょうけど、当然拘束時間は増える(自由時間は減る)わけで、やはり収入増が第一目的になりますよね。

あと、受け入れが進まない理由には、終身雇用(≒メンバーシップ型雇用)が根強く、副業者に社内の仕事を任せることに企業が慣れていないからだという分析もあるようです。そうはいっても外注とか派遣とかは浸透しているし、マッチングの問題だってフリーランスやギグワークみたいなものがインターネットサービスを使って次々と成立してるわけだから、その分析はちょっと違うかなとも思えます。

結局、副業者とフリーランスやギグワークの間に違いがあるとすれば、副業者に仕事を頼む場合、本業との兼ね合いで、過労による労災などのリスクもあることや、ノウハウ漏えいの懸念などがネックになっているのかもしれません。

役所と民間は違うのに、なんでこの投稿で民間の副業事情を取り上げるのか?

自由化が進む民間企業の副業と、解禁という言葉だけが独り歩きしている公務員の兼業では、一見、制度的には雲泥の差があるように感じることでしょう。しかし、両者には本質的には共通する面もあるんです。

それは、雇い手「スキル向上を」、働き手「目的は収入増」という同床異夢があることです。

いや、副業を解禁している地方自治体と職員のギャップは、民間企業以上に大きいかもしれません。

なぜなら役所は、職員の副業に対してスキル向上のほか、地域課題の解決に貢献してもらうこと(≒地元の役に立つこと)までも期待しているのが透けて見えるからです。

これが民間企業の副業であれば、「ルールを守れば、他社の役に立ってきてもいいよ」で済むはずですが、役所だとそうはいかず、副業であっても世のため人のためではければならないのです。なんとも息苦しい。

役所の副業解禁というのは、職員の檻(オリ)を解放しているように見せて、実は餌を撒いてそっちに誘導しているだけなのかもしれない――それに乗っかって働く職員が、「やり甲斐詐欺」だと思わないのならよいのですけど。

民間企業の副業のニュースを読みながら、私にはそんな下世話なことが頭をよぎってしまいました。

ところが、その一方で冷静に考えれば、こうした副業の解禁は悪いことではないのかもしれません。

なぜなら、最近でいう、こうした地域貢献型の副業は、ひと昔前は、無償副業=地元公務員のボランティア活動的なもので担われていた面もあったように思うからです。そういうものに対して一応薄謝を貰ってよいことになった、という意味ではよい変化だと考えるべきなのでしょう。

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