公務員の副業が解禁されつつあるという傾向は本物か②

 前回、国家公務員の兼業規制の緩和(正確に言えば、必ずしも広がっているとは言い難いので、明確化というべきかも)について紹介しましたが、地方公務員についても兼業禁止規制が緩みつつあると言われることがあります。今回の記事では、国の通知に先んじて副業緩和の先陣を切ったとされる神戸市と生駒市の制度を紹介します。

神戸市 地域貢献応援制度(内閣省資料に基づく抜粋)2017年4月~生駒市「地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事制限の運用について」2017年8月~
【対象職員】
●一般職の職員
●活動開始予定日において在職6ヶ月以上
【対象活動】
●報酬等を得て行う、公益性の高い継続的な地域貢献活動
社会的課題の解決を目的とし、神戸市内外を問わず地域の発展・活性化に寄与する活動
【要件審査】
●勤務成績が良好
●勤務時間外、週休日及び休日の活動
●許容できる範囲の報酬
●過去5年以内に活動する団体との契約、補助、指導、処分を行う職に就いていない
●営利を主目的とした活動ではない
1 目的(略)
2 対象となる活動
次の要件をすべて満たす活動であること。
(1) 公益性が高く、継続的に行う地域貢献活動であって、報酬を伴うもの。
(2) 市内外の地域の発展、活性化に寄与する活動であること。
3 対象職員
次のいずれにも該当する者であること。
(1) 一般職の職員(パートタイム会計年度任用職員は除く)であること。
(2) 活動開始予定日において、在職1年以上であること又は本市以外で1年以上の職務経験(正規職員相当に限る。)を有すること。
(3) 活動開始予定日の直前の人事評価について、前1回の評価が目標達成度評価はB以上、職務行動評価はB2以上である者。(ただし、目標達成度評価又は職務行動評価を1度も実施していない職員の場合、当該評価結果は考慮しない。)
4 許可申請
(1) 職員が上記活動を行おうとする場合は、次の書類により許可を受けなければならない。なお、書類の提出先は人事課長とする。
・「様式1 営利企業等従事許可申請書(兼変更許可・許可取下申請書)」
・「様式2 活動実績・計画報告書」
・ その他任命権者が必要と認める書類
(2) 許可にあたっては、要件・内容の審査を行う。
5 審査基準
以下のいずれにも該当していること。
(1) 勤務時間外、週休日及び休日の活動であり、職務の遂行に支障を来たすおそれがないこと。
(2) 地方公務員法第33条に規定する信用失墜行為の発生のおそれがないこと。
(3) 活動先の団体等と生駒市との間に特別な利害関係が生じるおそれがなく、かつ特定の利益に偏することなく、職務の公正の確保を損なうおそれがないこと。
(4) 報酬は、地域貢献活動として許容できる範囲であること。
(5) 市内外の地域の発展、活性化に寄与する活動であること。
(6) 営利を主目的とした活動、宗教的活動、政治的活動、法令に反する活動でないこと。
6 許可
(1) 任命権者は、審査において要件を満たさないと判断した場合は、理由を付して許可しない旨の通知を送付するものとする。
(2) 任命権者は、内容審査において審査基準を満たすと判断した場合は、条件を付して許可通知書を送付するものとする

 以上を見る限り、公益的な活動なら、副業が許可されやすくなったということはわかりました。この手の「公益的活動型」の兼業規制緩和は近年のトレンドらしく、この2都市のほかでも導入が進んでいます。

 追随組のうち、主要産業が水産業である北海道鹿部町は、ホタテ、コンブ漁に現職公務員の手を借りることができるようにすることで、人手不足をカバーすることをねらいの一つとして、2019年11月から副業規制緩和(ただしここも実際には具体化にすぎない)に踏み切ったと報じられています。単純に考えれば水産業は民間セクターですが、状況が状況だと、特定の民間産業に従事することも公益的・地元貢献的な活動となるわけです。こればかりは地域差としか呼びようがないですね。

 このほか、宮崎県新富町も、2018年10月からは勤務時間外で地域に貢献する活動ならOKとしています。農家の手伝い、高齢者の買い物や地域行事の支援などに限らず、コンビニのアルバイトも該当するそうです。町長曰く「今や地域になくては困る存在だから」だそうです。

 他にも、青森県弘前市では、2021年10月からリンゴ農家の手伝いを兼業として解禁するというニュースもありました。同市は以前から部活動のコーチやねぷた祭りの絵師の副業は認めていたそうですね。

 問題は、そういう公益的な活動が、本当に公務員が副業としてやりたいと思っていることなのかという点です。副業が、公務員の仕事の延長線上になるのだとすると、楽しいと思える人ばかりではありません。田舎だとコミュニティが狭く、周りも知り合いばかりですしね。

 結局、副業規制が緩くなったという言葉は単なる独り歩きであり、実際には基準が明確化されただけで、ほとんど変わっていないようなものではないかという気もするのです。

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